柔道整復学 理論編 下腿骨幹部骨折

下腿部骨幹部骨折

a下腿骨骨幹部骨折

特徴
・高エネルギー外傷⇒脛腓両骨骨折が多い
・開放性になりやすい
・栄養血管が乏しい⇒偽関節形成
・変形治癒⇒機能障害を残す
・疲労骨折がある

発生
直達外力
交通事故高所から落下重量物の落下
骨折線:横骨折またはそれに近い斜骨折

両骨骨折では骨折部の高さがほとんど同じ高さになる
凹側にきつ状骨片を作ることがある
粉砕骨折、重複骨折

介達外力
スポーツなどの転倒
相対的に見て近位部に対し遠位部が外旋するもしくは内旋
螺旋状骨折斜め骨折

転位
直達外力
作用した外力の方向により異なる
骨折部屈曲転位、前方凹の反張下腿屈曲

介達外力
定型的骨折 中央遠位1/3境界部骨折
骨折線 前内方から後上方に向かう

近位骨片は前内方
遠位骨片は後外上方

近位骨片が皮膚を内部から貫通開放性骨折
遠位骨片が後方の筋肉を穿通枝血管損傷神経損傷

小児では厚い骨膜に覆われているため骨片転位は少ない
骨膜下骨折若木骨折を生じやすい

症状
骨折症状が著明
機能障害 起立歩行不能
閉鎖性骨折主張が強く光沢水疱形成
直達外力開放性骨折著しい出血や骨片の露出もまれでない
介達外力でも開放骨折になることがある

直圧整復法
屈曲整復法
牽引療法
観血療法鋼線牽引療法

後療法
早期⇒下肢の等尺性運動
症状経過に従って手技療法物理療法を行う

装具固定後⇒松葉杖による免荷歩行⇒部分免荷
下腿の等尺性運動を積極的に行う
症状や経過に合わせて足ひざ関節可動域訓練を開始⇒等尺性収縮

骨癒合完了後⇒固定装具を除去し全負荷歩行
足ひざ関節への抵抗運動

後遺症
・骨折部変形癒合
・反張下腿外反内反下腿を残す
・斜骨折⇒短縮転位の整復および固定が困難。短縮を残しやすい

関節拘縮
尖足拘縮が多い
原因は腓腹筋損傷、総腓骨神経麻痺

遷延癒合、偽関節
中央・遠位1/3骨折横骨折に多い

その他の後遺症
筋萎縮、慢性浮腫

b.腓骨骨幹部単独骨折


概説
脛骨が副子となるためほとんど転位しない

発生
直達外力
骨折線
横骨折、緩やかな斜骨折

転位
外力の方向による。軽度

症状
局所の腫脹限局性圧痛
歩行も可能なものが多い。見落とし注意

整復
患者を背臥位膝関節軽度屈曲位
助手に下腿近位部を固定
術者足部を外して牽引しながら足関節を内転し骨片に着圧を加えて整復
固定
金属副子で大腿後面中央部から足の MTP 関節手前まで
肢位
ひざ関節軽度屈曲位 脚関節軽度底屈位
腫脹消退後は、吸水硬化性キャスト材

後療法
早期から下肢の等尺性運動
経過に従い主義物理療法
装具固定を行う場合は装具のまま硬いの等尺性運動
ひざ関節の等尺性運動
経過に合わせて免荷歩行から部分免荷
足関節の等張性運動を開始

後遺症
ほとんど見られない。まれに腓骨神経麻痺

C.下腿骨果上骨折

解説
骨幹端付近の骨折で手脛骨単独骨折が多い

幼小児で骨端線離開
下部骨折を合併⇒厄介

発生
介達外力が多い
・高所からの落下。脛骨長軸方向への衝撃同時に側方への屈曲
・果上部に外転力
・足部固定で下肢捻転

転位
外力の方向による
外力が働いた場合⇒遠位骨片が外上方に捻転
小児の骨膜下骨折⇒転位少ない

症状
骨折部の腫脹、限局性圧痛
骨膜下骨折でも荷重歩行困難
完全骨折で骨片転位による変形は明らか。
異常可動性、軋轢音

治療法
牽引直圧整復法
転移経路なものは助手に下腿近位部を固定
術者は脚関節を両手で把握して牽引し屈曲転位を整復。直圧を加えて側方転位を征服
牽引療法
ブラウン架台に患肢を乗せ絆創膏またはスピードトラックなどで骨折部よりやや近位から持続牽引する
間欠療法
転位の著しいものに適応

固定
大腿中央から足MTP関節まで金属副子で固定

後療法
7~10週で固定除去
外反偏平足発生予防には、固定除去後に足底板を使用する

後遺症
わずかな転位でも機能障害
斜骨折⇒再転位しやすい

d.下腿疲労骨折

概説
成長期スポーツ障害の代表疾患
オーバーユース
多発部位:脛骨(最多)、中足骨、腓骨
好発年齢:10歳~18歳
女性⇒月経異常

分類

(1) 脛骨脛骨骨折

・近位・中央1/3境界部(疾走型A)
・中央1/3部(跳躍型)
・中央・遠位1/3境界部(疾走型B)

(2) 腓骨骨折

・近位1/3部(跳躍型)骨折
・遠位1/3部(疾走型)骨折

発生
筋収縮による牽引力が加わり疲労骨折になると考えられている
脛骨中央1/3部⇒前方凸の頂点になる
跳躍型は難治性になりやすい

腓骨近位1/3部⇒ランニングなどでたわみが発生

症状
初期
・単純Ⅹ線⇒骨折線みられない
・患側片脚跳躍動作(hop test)陽性
・限局性圧痛、腫脹、熱感
2~3週後
・単純Ⅹ線⇒骨皮質の肥厚、亀裂骨折
・触診⇒仮骨を触れることがある

確定診断には、MRIが推奨

治療法
・スポーツ禁止(1~2ヶ月)
・再発しやすいので、復帰後の練習方法や練習量の指導

難治性の脛骨中央1/3部(跳躍型)⇒観血療法

fukuchan

柔道整復師、鍼灸師、医薬品登録販売者として治療院を開業しています。 柔道整復師、鍼灸師を目指す学生さん向けに、オリジナルイラストを使って教科書をわかりやすくして発信しています。

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