柔道整復学 理論編 骨盤骨骨折

骨盤骨骨折

概説
・交通事故、高エネルギー外傷に伴い発生頻度、重症度が増す
・スポーツ外傷・障害での裂離骨折、疲労骨折
・高齢者の脆弱性骨折

分類
1.骨盤単独骨折
2.骨盤輪骨折

1. 骨盤単独骨折

筋の牽引による裂離や直達外力が高い
合併症のない場合:骨癒合が得られれば予後は良い


分類

1. 腸骨翼単独骨折(デュベルニー骨折)

直達多い
骨片転位:上外方転位(内・外腹斜筋、腰方形筋)
転子果長⇒正常
棘下長⇒延長する場合あり

 

2. 恥骨単独骨折

直達多い
恥骨上枝部骨折:鼠蹊部に皮下出血
恥骨下枝部:会陰部、陰嚢
直達外力発生:恥骨結合離開、尿道損傷合併

 

機能障害:股内転力低下(痛み、裂離骨片)

 

3. 座骨単独骨折

直達多い
ハムストリングによる裂離骨折もある⇒下方転位
機能障害:股伸展力低下(痛み、裂離骨片による)

 

4.仙骨単独骨折

直達外力多い
横骨折多い
仙腸関節連結部よりも下方で発生
骨片転位:前方転位が多い

5. 尾骨単独骨折

直達外力
遠位骨片:前方へ屈曲転位。転位大きければ直腸損傷
疼痛:着座時の痛みは長期にわたる

 

6. 腸骨稜裂離骨折

介達外力(身体をねじる)で発生。
発生:腸骨稜前方(外腹斜筋)野球の空振りなど

7. 上前腸骨棘裂離骨折

発生:股伸展+体幹伸展動作(短距離走のスタート、走り幅跳びなど)
骨片転位:外下方(縫工筋、大腿筋膜張筋)
機能障害:屈曲、外転、外旋力低下

8. 下前腸骨棘骨折

発生:大腿直筋。サッカーのキックの急な収縮、過伸展

9. 座骨結節裂離骨折

発生

➀体幹前傾姿勢から膝伸展(ハムストリングの牽引)。ハードルなど。
➁急な両下肢外転(大内転筋)。チアリ―ディングなど

治療法
・該当する部位に付着する筋を弛緩させる肢位とらせる
・必要に応じ硬い床に3~5週臥床⇒その後松葉杖歩行
・体幹および下肢に対し、地頭運動から開始して徐々に抵抗運動

2.骨盤輪骨折

骨盤輪の連続性が絶たれている骨折
恥骨枝骨折が最も多い

垂直重複骨折(マルゲーニュ骨折)


同側の恥骨上下枝+座骨+仙腸関節離開や腸骨の骨折がある骨折(縦に骨折)

(症状)
1. 骨片:大腿以下の下肢と共に上方転位
2. 下肢変化:外見上の下肢短縮。棘下長の変化はなし
3. 起立・歩行不能
4. 背臥位でSLRできない。他動的な股関節の運動は可能

(合併症)
1.ショック:大量の出血により発生
2.膀胱.尿道損傷:両側恥骨の骨折により膀胱損傷・尿道損傷
3.腸管損傷:腹壁強直、腸管蠕動音消失、腹部膨満感
4.神経損傷:片側骨盤輪骨折⇒腰、仙骨神経損傷 仙骨骨折⇒仙骨神経叢損傷
5.脂肪塞栓

(治療法)
連続性断裂部が1か所、安定性の良い2か所
固定
3~5週間:キャンパス牽引、直達牽引などで固定
運動
2~3週後:体幹および下肢の自動運動ならびに抵抗運動
3~5週後:松葉杖歩行開始。
回復には約10週かかる

注意すべき疾患

・婦人科疾患
・ユーイング肉腫
・下肢感染症による鼠径部リンパ節炎

参考文献

柔道整復学理論編 第6版 南江堂

fukuchan

柔道整復師、鍼灸師、医薬品登録販売者として治療院を開業しています。 柔道整復師、鍼灸師を目指す学生さん向けに、オリジナルイラストを使って教科書をわかりやすくして発信しています。

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