柔道整復学 理論編 前腕骨遠位端部骨折
前腕骨遠位端部骨折
橈骨遠位端部骨折
(概要)
・幼児から高齢者まで幅広く発生
・幼小児→若木、竹節状が多く予後良好
・高齢者→粉砕、多発骨折多い。ケースにより治療が難しくなる
(分類)
➀遠位端部骨折
(1)伸展型(コーレス骨折)
(2)屈曲型(スミス骨折)
➁骨端線離開
➂辺縁部骨折
・バートン骨折(掌側・背側)
・ショウファー骨折
・T、Ⅴ、Yなど関節内に骨折線が走るもの
1. コーレス骨折
(発生)
介達外力が多い
手掌をついて転倒し、手関節に強度の伸展力が強制されて受傷
※橈骨遠位端部に掌側凸の屈曲力が働き、この際に前腕遠位端部に過度回外の捻転力が加わる
(症状)
➀骨折線
前額面:橈側近位から尺側遠位
矢状面:手関節の1~3cm近位の手掌から、やや斜め背側近位に走る
➁転位
・背側転位
・橈側転位
・短縮転位
・捻転転位
➂変形
骨折部の厚さ・幅の増大
a. フォーク状変形:背側転位高度。近位位骨片に騎乗・短縮が起こる。
b. 銃剣状変形:遠位橈尺関節が脱臼して、尺骨茎状突起が尺側に突出して発生
➃腫脹
高度の腫脹が発生。前腕遠位端部、手関節、手部にかけて出現
⑤疼痛
限局性圧痛、介達痛
⑥機能障害
前腕の回外運動、物を握る、1・2指でつかむ動作、手関節の運動制限
(整復法)
➀牽引直圧整復法
※転位軽度の骨折に適応
患者:座位または背臥位、肘90°屈曲
助手:骨折部の近位部を把持固定
術者:両手の母指を背側にあて、両四指を掌側にあてる。
手根部と共に遠位骨片を把握し回内位に末梢牽引を行い捻転、側方、短縮転位を取り除く
⇩
牽引を緩めず両示指で近位骨片を掌側から圧迫し、同時に両母指で背側から掌側にむけて遠位骨片を調圧して整復する
⇩
遠位骨片の再転位を防ぐため手関節軽度屈曲、手関節軽度尺屈にして固定する姿位に移行する
➁屈曲整復法
※転位高度な骨折に適応
患者:座位または背臥位、肘90°屈曲
助手:骨折部の近位部を把持固定
術者:両手の母指を背側にあて、両四指を掌側にあてる。
回内位で軽く橈側から遠位骨片、尺側から近位骨片に圧迫を加えて、捻転・側方転位を取り除く
⇩
遠位骨片に手と共に過伸展を強制して、その肢位のまま両母指で遠位骨片骨折端を前腕長軸末梢方向に圧迫し近位骨片の骨折端に近づける
⇩
両示指で近位骨片を掌側から固定して、その肢位のままで前腕長軸方向への圧迫を継続し
遠位骨片が近位骨片の骨折端背側に適合した所で、遠位骨片を掌屈させて同時に背側から遠位骨片を背側から圧迫して背側転位を整復する
(固定)
範囲:肘関節を含みMP手前まで
肢位:肘90°、前腕回内位、手関節軽度掌屈、尺屈位
(合併症、後遺症)
➀尺骨遠位端部(尺骨茎状突起骨折)
➁舟状骨骨折
➂遠位橈尺関節脱臼
➃月状骨骨折
⑤変形治癒
⑥指、手、肘、肩関節拘縮⇒特に高齢者の肩・肘
⑦手関節の外傷性関節炎
⑧成長軟骨板損傷による成長障害
⑨神経麻痺(橈骨、尺骨、正中)
⑩前腕回旋障害
⑪反射性交感神経ジストロフィー(RSD) ズデック骨萎縮
⑫長母指伸筋の断裂⇒後療時の断裂に注意
⑬手根管症候群
2.スミス骨折(逆コーレス骨折)
(発生)
手背をつき転倒
橈骨遠位端部に強い背側凸の屈曲力
(症状)
➀骨折線の走行
手関節の1~3cm近位の背側かから、やや斜めに掌側近位へ走る
➁遠位骨片の転位
・掌側転位
・橈側転位
・短縮転位
・捻転転位
➂変形
・骨遠位端が背側凸
・掌側転位高度になり、近位骨片に騎乗っかつ短縮転位⇒鋤状変形
➃腫脹、⑤疼痛、⑥機能障害
コーレス骨折と同様
整復法
牽引直圧整復法
患者;座位または背臥位、肘90°屈曲
助手:上腕部固定
術者:両母指を掌側に、両4指を背側にあてがい、手根部と共に遠位骨片を把持。
回外位に末梢牽引を行い捻転転位、側方転位、短縮転位を取り除く
⇩
末梢牽引を緩めず両示指で近位骨片の背側から掌側に向け、同時に両母指で掌側から背側に向け遠位骨片を直圧して整復
(固定)
範囲:肘関節含みMP手前まで
肢位:肘関節90°屈曲、前腕回外、手関節軽度伸展、軽度尺屈位
3.橈骨遠位骨端線離開
※早期閉鎖で成長障害
(発生)
コーレスと同じ機序
(転位)
遠位骨片が背側へ転位。
ソルターハリスⅠ型、Ⅱ型
(整復法)
前腕回内位にて末梢牽引し手関節屈曲しながら遠位骨片を背側から圧迫して整復。
(固定)
コーレス3~4週間
4.辺縁部骨折(掌側バートン、背側バートン)
(発生)
コーレス、スミス骨折と同様に手をついて転倒
※橈骨関節面に骨折線が及ぶ⇒関節内骨折
安定性悪く観血療法の適応になることが多い
掌側バートン骨折
(症状)
遠位骨片は掌側転位。橈骨手根関節は不全脱臼
(整復法)
中間位にて末梢牽引を行い手関節の屈曲とともに掌側から端億へ遠位骨片を圧迫して整復
(固定法)
範囲:肘関節ふくみMP手前まで
肢位:肘90°手関節軽度屈曲、前腕中間位
背側バートン
(症状)
遠位骨片は手根部と共に背側転位。橈骨手根関節は不全脱臼
(整復法)
回外位に末梢牽引を行い、手関節の伸展とともに背側から掌側へ遠位骨片を圧迫して整復
(固定)
範囲:肘関節を含みMP手前まで
肢位:手関節軽度伸展、回外位、肘90°
5.ショウファー骨折(橈骨茎状突起骨折)
(発生)
手関節に急激な撓屈強制
(整復)
月状骨関節面を支点とし手関節を尺屈し、橈側側副靭帯を緊張させ整復
(固定)
範囲:上腕から第1指を含めてギプス副子
肢位:肘90°、手関節尺屈
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