柔道整復学 理論編 大腿部の軟部組織損傷

大腿部の軟部組織損傷

大腿部打撲(チャーリーホース)

大腿部を強打し筋が損傷
前面:サッカー、ラグビーによるコンタクト

発生
大腿四頭筋の強打、コンタクトスポーツで相手の膝、肘、ヘルメット、キック等により打撲

症状
受傷直後:鈍痛、運動制限
時間経過:腫脹出現
重症例⇒出血により筋内圧上昇により皮膚光沢
翌日:腫脹、圧痛、屈曲制限

まれに、筋内圧の過度な上昇による屈曲制限

長期経過:骨化性筋炎、筋組織の拘縮⇒膝関節屈曲制限

分類
1. 軽度
疼痛、腫脹軽度。膝関節90°以上屈曲可能

2. 中等度
疼痛、腫脹やや強く、膝90°まで屈曲できないもの

3. 重度
疼痛、腫脹強く、膝45°までしか屈曲できないもの

   

治療法
原則は保存療法
急性期:出血を最小限にとどめる⇒RICE
屈曲拘縮になりやすいので筋を伸長肢位をとる

RICE期間:痛みや大腿周囲径の増大が落ち着くまで
荷重:可能な範囲で行う
重度損傷の場合は血腫が前方に発生しやすい⇒受傷後5、6時間以内に痛みが増悪してくる場合は対診
3日以降に90°屈曲不能な場合⇒温熱+無負荷可動域訓練

復帰目安
急性期後:膝90°以上屈曲可能⇒3週間以内の復帰

スポーツ復帰条件
➀疼痛、可動域制限がない
➁筋力、柔軟性が十分医回復している(健側の90%以上)
➂フィットネス(アジリティ(敏捷性)、有酸素能力の改善

大腿部肉離れ

大腿四頭筋肉離れ

・大腿直筋に多い
股:伸展 膝:屈曲位の収縮で発生
危険因子
➀筋疲労
➁先行する筋損傷
➂柔軟性・コンディショニング低下
➃不適切なウォーミングアップ

症状
・急激な大腿前方の痛み
重症例:腫脹、皮下出血斑、硬結、膝屈曲制限

皮下出血⇒24時間以内には現れにくい
筋収縮⇒体縮した塊を触知⇒時間経過により腫脹が触れにくくなる

程度による分類
Ⅰ度
筋腱複合体の最小限の損傷
・軽度な痛み。
・軽度の腫脹、筋機能低下、可動域制限

Ⅱ度
筋腱移行部の損傷
・筋力、可動域制限

Ⅲ度
筋腱移行部の断裂

徒手検査・計測
1. 関節可動域
腹臥位での膝屈曲角度の計測(HBD)

軽度:膝90°以上屈曲可能
中等度:90°未満の屈曲制限
重度:45°以下の屈曲制限
※打撲時と一緒。しり上がり注意

2. 大腿周囲径

治療法
急性期:RICE、荷重制限
亜急性期:関節可動域訓練、温熱、ストレッチ・等尺性・等張性収縮

スポーツ復帰条件
➀疼痛、可動域制限がない
➁筋力、柔軟性が十分医回復している(健側の90%以上)
➂フィットネス(アジリティ(敏捷性)、有酸素能力の改善
※打撲と同様

再発予防
・適切な治療
・ストレッチ、ウォーミングアップ

復帰目安
軽症だと1−2週間
中等症だと2−3週間
重症だと3週間以上
治療意識
「損傷した筋繊維部の血腫を大きくしない」
血腫が大きくなってしまうと、
・損傷した筋繊維の間が広がってしまう
⇒くっつくまでの時間がかかる、脆かったり、弱かったり、硬い筋肉になる。
特に最重要はコンプレッション
物理的に損傷した筋繊維同士を近づけて、血腫が拡大するスペースをなくしてしまう。

ハムストリングの肉離れ

遠心性収縮で発生しやすい
発生部位:筋腱移行部で多い

まれに膝伸展位、股屈曲強制で発生

その他の因子
➀筋疲労
➁先行する筋損傷
➂柔軟性・コンディショニング低下
➃不適切なウォーミングアップ
⑤下肢長の不一致
⑥発汗によるミネラル枯渇
⑦大腿四頭筋のアンバランス

症状
・圧痛、腫脹、皮下出血斑、筋の硬結・陥凹
陥凹⇒数時間経過すると触れにくくなるが、経過が長くなると触れやすくなる

検査
患者腹臥位で膝伸展⇒重症では伸ばせない

膝伸ばせたら⇒ハムストリングのタイトネステスト

治療法(実技教科書)

急性期の治療

受傷直後から48時間まではRICE処置
この際に損傷筋の緊張を除いた肢位が望ましい

固定

大腿部の損傷筋が弛緩した状態でテーピング
十分な冷却の後、次の順番で固定(アンダーラップは省略する場合がある)
1.アンカーテープ
2.Ⅹサポート
3.水平サポート
4.アンカーテープ
5.オーバーラッピング(完成)

注意すべき疾患
大腿部骨化性筋炎
筋打撲後に起こりやすい合併症(後遺症)
受傷時の初期処置が適切に行われていれば、発生を予防できるか最小限にとどめられる

症状
膝屈曲制限、大腿部の運動痛、腫脹
Ⅹ線⇒骨硬化像 超音波早期に発見できる

治療
患部の安静と温熱療法を中心に行う
炎症終了後:自動運動開始。徐々に愛護的な他動運動、関節可動域訓練
2~3か月:運動制限等の症状改善
6か月:治癒することが多い

完全な吸収はまれ⇒経過不良で摘出

fukuchan

柔道整復師、鍼灸師、医薬品登録販売者として治療院を開業しています。 柔道整復師、鍼灸師を目指す学生さん向けに、オリジナルイラストを使って教科書をわかりやすくして発信しています。

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