柔道整復学 理論編 足関節部の軟部組織損傷

足関節・足趾部の軟部組織損傷

1足関節捻挫

a.外側靱帯損傷

概説
前距腓靱帯の単独損傷が最も多い。踵腓靱帯と後距腓靱帯の合併損傷もある
靭帯の機能
前距腓靱帯: 距骨の前方移動や底屈の制動。足関節の内転を制動する機能は少ない,
踵腓靱帯:足関節の内転制動
後距腓靱帯:距骨の後方移動を制動する.

発生
足部を内がえしすることで発生する.
症状,所見
受傷直後は疼痛のため起立不能になることがあるが,しばらくして歩行可能になるものが多い.
疼痛,腫脹:足関節外側部。損傷の程度とは必すしも一致しない.
皮下出血斑:数日後,外果下方の出現するものもある.
受傷時の肢位を強制⇒疼痛が誘発
損傷靭帯
屈曲(底屈)位での疼痛増強⇒前距腓靱帯
中間位での疼痛と不安定性⇒踵腓靱帯
の断裂を疑う.

(前方引き出しテスト)(後方引き出し)
➀下腿遠位部を固定して足関節を軽度屈曲 (底屈)
➁内側靱帯の前脛距部と脛舟部を弛緩させる目的で内転
➂距骨を前方に引き出す⇒不安定性(+)=前距腓靱帯断裂
➃距骨を後方へ押し付す⇒不安定性(+)=後距腓靱帯断裂

靱帯の状態
a.損傷の程度による分類
第Ⅰ度:靭帯の微小損傷
第Ⅱ度:靭帯部分断裂。不安定性が軽度・中等度、機能障害
第Ⅲ度:靭帯の完全断裂。関節不安定性、機能障害が高度。脱臼にいたることもある

複数の靱帯で構成される外側靱帯損傷では,
前距腓靱帯単独損傷
前距腓靱帯と踵腓靱帯損傷
前距腓靱帯と鍾腓靱帯と後距腓靱帯損傷
分類する考え方もあり,単純 Ⅹ線像での内反動揺検査(ストレス撮影)が指標に用いられている.
「柔道整復学・実技編 改訂第2版」.
検査法
1.前方引き出しテスト
(1)前距腓靭帯完全断裂以上の損傷でみられる
(2)前距腓靭帯部分断裂では一方の手で下腿遠位部を把持し、他方の手で踵部を後方から前方に引き出すように圧迫し、距骨に内旋を加えると距骨と外果前方との間に生じた間隙を触知

「柔道整復学・実技編 改訂第2版」.
2.内反動揺検査
一方の手で下腿遠位部を、他方の手で足背側を把持し足部に内反強制すると、距骨と外果先端の間に間隙が生じる
正常関節(Ⅹ線像による距骨傾斜角の評価)
(1)30%に5°程度の傾斜
(2)20%に5°程度の左右差
b)距骨の傾斜
(1)5~15°大きい場合⇒前距腓靭帯断裂
(2)15°~30°大きい場合⇒前距腓靭帯・踵腓靭帯断裂
(3)30°以上大きい場合⇒完全断裂
と推測される

b内側靱帯(三角靱帯)損傷

概説
格闘技や芝生の上で行うコンタクトスポーツで発生することが多い.
受傷機序は. 足部外転. 外がえし外カが多い
外側靱帯より強靱⇒裂離骨折発生しやすい

損傷部:受傷肢位により各線維が様々な程度で損傷
結合部の損傷を合併して脛腓骨間の離開を伴うもの⇒完全断裂している場合が多い
症状
腫脹・疼痛:内果およびその下方。荷重できないことが多い
脛腓靱帯結合部損傷を合併した場合⇒単純Ⅹ線像:脛腓骨間の離開. 内果関節裂隙の開大
治療法
(1)三角靱帯の部分損傷で脛腓靭帯結合部に損傷ない⇒保存療法の適応がある
(2)三角帯の完全断裂で脛腓靭帯結合部に損傷を伴う場合⇒観血療法の適応がある.
いすれの場合も荷重制限が必要である.
指導管理
アクシデントとしての要素が強く予防は難しい
足関節の柔性の維持や竸技場のサーフェイス合った靴の使用は必要.

c脛腓靱帯結合部損傷

概説
前脛腓靱帯の損傷頻度が高い

受傷機序
・距骨の外転.外旋.背屈強制(多い)
・底屈+軸圧
単独損傷は少なく.果部骨折や内側靱帯損傷に合併するため荷重不能例が多い.
前距腓靱帯損傷との合併例や単独損傷では見落とすことがある.
症状,所見
受傷時に下腿近位部まで痛みが走ったという訴え
前脛腓靱帯部の圧痛.他動的背屈・外旋時の疼痛増強
下腿中央部を内外から挟み圧迫⇒脛腓靱帯結合部に疼痛を訴える(squeezetest 陽性)

治療法
脛腓骨間の離開により距腿関節の不安定性が出現するため. 観血療法が多い.

d.ニ分靱帯損傷(ショバール関節の外側:踵骨と舟状骨ならびに立方骨を結ぶ靱帯)

踵立方関節の背側には. 背側踵立方靱帯および二分靱帯が付着している.

発生
足部の内がえし. または前足部内転が強制されることで発生
前距腓靱帯損傷との合併や. 踵骨側(前方突起部)の裂離骨折との鑑別が重要である.

症状
損傷部に圧痛があり. 損傷初期には腫脹が限局していることが多いが, 経時的に広がる.
治療
RICEの原則に従う. 強固な固定を必要とすることは少ない. 歩行時や荷重時に足底板やテーピングでアーチを補強するなどして疼痛が出ないよう固定を工夫する.
通常は2週程度で疼痛・腫脹消退

踵立方靱帯(踵舟靭帯、踵立方靭帯)
二分靱帯と踵骨前方突起二分靱帯や踵骨前方突起の圧痛点の目安として.外果と第5中足骨基部を結ぶ線の中点から2横指前方あたりに存在する.

足関節捻挫の類似鑑別

a.距骨滑車の骨軟骨損傷

外傷の有無で分類
外傷あり:骨軟骨骨折
外傷なし:離断性骨軟骨炎

骨軟骨骨折
発生
距骨の内転外力により発生.
荷重時の足関節に,屈曲(底屈)と内転が強制⇒滑車の内側後方が脛骨関節面と衝突
伸展(背屈)と内転強制⇒滑車の外側前方が腓骨の外果内側関節面と衝突
足関節外側靱帯損傷や外果骨折を合併多い
急性期にはこれらによる症状が著しいことから,骨軟骨骨折による症状は見落とされやすい

単純X線像:診断が困難.
有効な診断
離断が生じた場合:CT像
軟骨だけの損傷や完全離断にいたっていない場合:MRI像

サッカー,バレーボールによる報告があるが種目による特異性は報告されていない.

離断性骨軟骨炎
明確な外傷の既往がない.
病因
・関節面に加わる反復ストレス
・軟骨下骨層での血行障害による部分的な骨壊死

などが考えられるが,いまだ不明な点が多い.

b.足根洞症候群

概説
多くは足部損傷の既往歴がある
足根洞内には固有感覚受容器が豊富に存在

症状
・足関節捻挫後.経時的に後足部の倦怠感や不安定感
・根洞の外側開口部の圧痛が残存
・整地での立位や歩行によって疼痛は増強
・距骨下関節の不安定性の関連性が示唆
・足根洞を中心として足の外側に疼痛
治療
同部位に局所麻酔薬(ステロイドを加えることもある)を注射⇒劇的改善例あり

c腓骨筋腱脱臼

概説
外果後方を通過する腓骨筋腱が外果を乗り越え前方へ逸脱する.長腓骨筋腱の単独脱臼が多い
分類
( 1 )先天性脱臼
( 2 )後天性脱臼(外傷性脱白、非外傷性脱臼)

発生機序
1.外傷性脱臼
足関節の外がえしに伴い発生する。内がえし説もある.

2.非外傷性脱臼
足関節を外がえしすることにより, 長腓骨筋健が外果の前方へ移動する
上腓骨筋支帯の欠損や腓骨筋腱溝形成不全などの素因があるものが多い.
症状
1.外傷性脱臼
上腓骨筋支帯の損傷を合併するため外果部周辺の疼痛. 腫脹は著明.
2.非外傷性脱日
外がえしの肢位を中間位へ戻すと逸脱した腱は外果の後方へ復位する
鑑別診断
足関節の外側靭帯損傷、外果骨折

d.衝突性外骨腫(フットボーラーズアンクル)

脛骨と距骨の衝突=前方インピジメントによる形成される骨棘

発生
足関節靭帯損傷後の不安定性に起因
サッカー、バスケ選手に追い

不安定性のある状態での背屈⇒衝突⇒骨棘

骨棘位置
脛骨遠位前方、距骨滑車、距骨頸部付近
症状
骨棘が確認されても疼痛や可動域制限を生じないことも多い
本当の痛みの原因⇒肥厚した関節包などが、足関節伸展で骨棘に挟み込まれている説
足関節前面の疼痛、腫脹、背屈制限
骨性隆起を触知することもある.
治療
足関節の不安定性や最大伸展(背屈)・屈曲(底屈)時に疼痛ケース
⇒スポーツ活動を制限,ストレッチ,テーピングや足底板などで治療.

疼痛が強く可動域制限も大きいケース
⇒観血療法の適応がある
靱帯損傷後の短期間に急速に進行する例もあり,靱帯損傷の治療を確行うことが発症の予防となる.

e.三角骨障害

距骨後外側の過剰骨である三角骨が, 足関節の最大屈曲(底屈)時に脛骨遠位端部後縁と脛骨に挟まれる
いわゆる後方インピンジメント

発生
バレーダンサー, サッカー選手に多い
足関節の靱帯損傷後に発症することが多く. 既往の有無を聴取することも重要である.
足関節後面の疼痛と可動域制限を認める症例には, 長母趾屈筋腱の損傷や腱鞘炎もあり鑑別が必要ある
治療
スポーツ活動の制限, ストレッチ, テーピングなどで底屈を制限
疼痛が強く可動限も大きい場合⇒観血療法の適応がある.
f.その他
距骨外側突起骨折,小児期の腓骨遠位骨端骨損傷

F・注意すべき疾患
( 1 )変形性足関節症
( 2 )外果や内果部の過剰骨

参考文献
「柔道整復学・理論編」南江堂 改訂第6版
「柔道整復学・実技編」南江堂 改訂第2版

fukuchan

柔道整復師、鍼灸師、医薬品登録販売者として治療院を開業しています。 柔道整復師、鍼灸師を目指す学生さん向けに、オリジナルイラストを使って教科書をわかりやすくして発信しています。

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