柔道整復学 理論編 手関節および手指の脱臼

手関節および手指部の脱臼

1. 遠位橈尺関節脱臼

(分類)
➀背側脱臼
➁掌側脱臼
➂橈尺関節の離開
※尺骨の方向で分類する

(発生)
手関節伸展位で手を突き
回内強制なら⇒尺骨頭背側転位(背側脱臼)
回外強制なら⇒尺骨頭掌側転位(掌側脱臼)

(症状)
➀背側脱臼
・前腕回内位で尺骨頭背側突出、回外運動制限

➁掌側脱臼
・前腕回外位で尺骨頭掌側突出、回内運動制限

➂橈尺関節の離開
手関節の横径増大のみ、運動制限は軽度

整復位
背側脱臼
1.肘関節90°、前腕を固定して主部を握り前腕遠位方向に牽引
2.手部を撓屈させながら前腕を回外し、尺骨頭を橈骨に押し付ける

➁掌側脱臼
1. 背側脱臼同様に牽引
2. 前腕を回内しながら手を鈴鹿に尺屈し、尺骨頭を橈骨に押し付ける

➂橈尺関節の離開
牽引した後に、橈骨・尺骨を押し付ける

 

2. 橈骨手根関節脱臼

(発生)
・非常にまれ
・手関節背屈位で手掌をついたり手関節屈曲位で手背を突き発生
(症状)
転位
手掌を衝く⇒背側転位(背側脱臼)
手背を衝く⇒掌側転位(掌側脱臼)

・それぞれコーレス骨折、スミス骨折に類似するので注意

(整復)
患者座位で前腕を固定し手部を末梢牽引
背側脱臼:患肢の手背側から両手で握り、両母指を手根部背側、他四指を前腕遠位端部掌側に当て屈曲
掌側脱臼:手掌側から握り、両母指を手根部掌側、他四指を前腕遠位端背側に当て伸展

(固定法)
肢位:前腕中間位、手は良肢位
範囲:前腕近位端部からMP関節の手前まで副子固定
期間:2~3週

(治療)
手部の拘縮と関節の治癒過程を後療して、適切な時期に関節可動域訓練

 

3. 月状骨および月状骨周囲脱臼

概要
・20~50歳の男に好発
・屈筋腱の下にある正中神経を圧迫する⇒正中神経障害。整復が遅延すると障害を残しやすい
・骨折を伴うことが多いが、手部の捻挫と見誤ることもある

発生
手関節の過伸展で発生
(分類)
月状骨と橈骨が正常、周囲が近位に脱臼⇒月状骨周囲脱臼
月状骨のみが掌側転位⇒月状骨脱臼

 

(症状)
➀手根部の前後径増大
➁肢位⇒手関節軽度尺屈、指屈曲
➂激しい腫脹、疼痛
➃しびれ⇒1~3指掌側面。特に2、3指の末梢部掌側面は正中神経の固有領域

(整復法)
1. 月状骨脱臼
患者:座位、肘90°屈曲、前腕を回外位
助手:前腕部固定
術者:両手で患者の第1指と他四指をそれぞれ把握し遠位方向に充分に牽引し月状骨の入る隙間を作る

整復されなければ
第1指以外で牽引を続けて母指を月状骨にあてて押し込むようにしながら、手関節屈曲させる
受傷後2週間以内なら整復可能といわれている

2. 月状骨周囲脱臼
患者:座位、肘90°屈曲、前腕を回内位
術者:両手で患者の第1指と他四指をそれぞれ把握し遠位方向に牽引し、第1指以外の四指を握ったまま牽引を続け、一度第1指を握った手を離して四指を患肢の手根部掌側に、母指を手根部背側に当てて把握しなおし、次いで手背部を掌側に圧迫しながら、牽引している手で手関節を尺屈、屈曲する

(固定法)どっちも一緒
肢位:手関節45°、提肘内で肘90°、回内位
1週間後に中間位で再固定
2~3週間後まで中間位保持を支持して固定を続けるが、できるだけ早期に手部や前腕への手技・理学療法を行う
範囲:前腕近位端~MP関節まで

4. 手根中手(CM)関節脱臼

発生場所
1位:第1CM関節
2位:第5CM関節
発生機序
CM関節の屈曲、側屈強制

症状
1. 第1CM関節脱臼

中手骨基部は背側転位(長母指外転筋)、中手骨全体は内転(母指内転筋)

※骨折も伴えばベネット骨折

2. 第2~5CM関節脱臼
まれ。
空手などで発生し第2~5中手骨がすべて背側に転位・突出

3.第5CM関節脱臼
・中手骨の屈曲が強い
・第5中骨は尺側手根伸筋により背側転位
・関節包の損傷が高度⇒再脱臼を起こしやすい。固定中の再脱臼もある

整復法
第1CM関節
術者は一方の手で指を把握し(滑り防止に包帯などを使用する)愛1中手骨長軸方向に牽引しながら外転すると同時に、他方の手の拇指で中手骨基部を遠位方向に押し出すように直圧して整復する。
牽引方向は末梢やや屈曲させる方向に行うのがよく直圧は末梢方向に突き上げると同時に外方から尺側に押し込むようにするとよい。

第1指以外のCM脱臼
術者は、一方の手で手関節遠位端部を把握し、前腕遠位方向へ強く牽引しながら伸展(背屈)すると同時に他方の手の拇指で中手骨基部を遠位方向に押し出すように直圧して整復する

固定法
第1CM関節脱臼
肢位:第1指外転
範囲:前腕中央から第1IP関節手前まで。第1MPはわずかに屈曲させる

第1以外
肢位:手関節軽度伸展
範囲:前腕掌側中央~MP手前

5. 第1指中手指節(MP)関節脱臼

(概説)
背側脱臼 多い
背側脱臼の水平脱臼、掌側脱臼⇒整復困難(手指骨や掌側板の介在が原因)

関節窩縁の小骨折や側副靭帯の断裂の合併ケース⇒治療期間が数か月に及ぶ

(分類)
➀背側脱臼(垂直脱臼、水平脱臼)
➁掌側脱臼

水平脱臼                  垂直脱臼
※垂直脱臼以外は整復困難
(発生機序・症状)
➀背側脱臼
機序:母指の過伸展、外転により発生
症状:側副靭帯の損傷は軽度である
変形
垂直脱臼⇒Z字変形
水平脱臼⇒基節骨と中節骨が平行になる
掌側脱臼⇒尺側側副靭帯断裂し基節骨基部が掌側転位。中手骨頭が長・短母指伸筋腱をわけて階段状変形

 

6. 第1指以外の中手指節(MP)関節脱臼

(発生)
・比較的まれ
・第2、5指に好発
・背側脱臼 多い
※徒手整復困難なものが多い
解剖学的特性
中手骨に付着する掌側板(volar plate)が膜様部で断裂し、側副靭帯、副靭帯、が緊張、掌側板が中手骨骨頭背側に移動し、基節骨基部との間に介在するため。
第2指の場合
指間靭帯、浅横靭帯、橈側の虫様筋、尺側の屈筋腱で形成される井桁状の構造の中に中手骨頭がはまり込み整復困難にする

(発生機序)
手関節伸展位で手をつき指が過伸展されて発生することが多い

(症状)
1. 背屈変形
2. 第2指脱臼⇒第3側に変位 第5指脱臼⇒第4指側に変位
3. MP:過伸展位で屈曲不能
4. PIP、DIP:軽度屈曲位
5. 掌側に突出した中手骨頭を触れ、その遠位の皮膚の陥凹

(整復法)
※牽引⇒ロッキングを悪化させる
中手骨を背側に押し上げると同時にMP関節を過伸展し基節骨を中手骨頭に押し付けるように軸圧を加えて、基節骨基部を遠位掌側押し込みながらMP関節を屈曲して整復する

整復不能なら観血療法

(固定)
範囲:前腕遠位部~DIP関節
肢位:MP関節軽度屈曲位
期間:2週間

7. 近位指節(PIP)関節脱臼

(概説)
突き指としての発生が多い
掌側板、側副靭帯、深指屈筋腱損傷、正中策損傷、中節骨の裂離骨折の合併も考える
分類・発生・症状
➀背側脱臼

(発生)
過伸展で発生 最も多い
中節骨基部が背側に水平に位置
掌側板損傷を伴う。ときに側副靭帯、正中策損傷を疑う
掌側に小骨片を残し中節骨が背側に脱臼するケース(脱臼骨折)
※このケースで関節面の40%以上が掌側骨片に含まれる際には側副靭帯がすべて小骨片についており安定性が悪くなる。⇒手術

 

(症状)
※深指屈筋断裂(ジャージーフィンガー)のケース⇒DIP屈曲不能

基節骨軸と中節骨軸と平行になった脱臼
1.PIP前後径増大
2.階段状変形
PIP関節が屈曲している脱臼
1.基節骨軸に対して背側方向に中節骨軸が一定の角度を持って弾発性固定
2.背側の皮膚に深い陥凹

➁掌側脱臼

発生頻度 低
正中策損傷⇒ボタン穴変形をきたす場合がある(受傷後すぐではなく数週から始まる)

(症状)
基節骨軸と中節骨軸が平行になった脱臼
1.PIP関節前後径増大
2.階段状変形

➂側方脱臼
外力が作用した側の靭帯が損傷
受傷後に患者自身が整復してしまうことが多い

(症状)
基節骨軸と中節骨軸が平行になった脱臼
1. PIP横径が増大
2. 階段状変形
3. 基節骨軸に対して橈尺側方向に中節骨軸が一定の角度を持って弾発性固定
4.側方動揺性

8. 遠位指節(DIP)関節脱臼

(概説)
突き指として発生
掌側板、側副靭帯損傷を伴い、マレットフィンガーや深指屈筋による裂離骨折
分類

(発生機序・症状)
➀背側脱臼


発生 多い
⇒DIP関節過伸展
1.DIP関節の前後径増大
2.弾発性固定
3.腫脹:軽微
4. 脱臼指がボタン穴変形様を呈する

 

➁掌側脱臼


(発生)
⇒DIP関節に屈曲や捻転強制
(症状)
1.DIP関節の前後径増大
2.中節骨に対して掌側方向に末節骨軸が一定の角度を持って弾発性固定(マレットⅢ型除く)

整復法
PIPと一緒

固定
骨折なく、関節安定しているもの⇒PIP固定せずDIP軽度屈曲
終止腱による裂離骨折や腱断裂⇒DIP過伸展

後療法
整復固定後
➀高挙:患肢をできるだけ高くする
➁圧迫:患部に綿花、スポンジ等をあて包帯にて圧迫

不必要な固定を避け、固定した状態でのアイソメトリック

fukuchan

柔道整復師、鍼灸師、医薬品登録販売者として治療院を開業しています。 柔道整復師、鍼灸師を目指す学生さん向けに、オリジナルイラストを使って教科書をわかりやすくして発信しています。

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