柔道整復学 理論編 膝関節・膝蓋骨脱臼
膝関節脱臼・膝蓋骨脱臼
膝関節脱臼
概説
・不全脱臼から自然整復されているものある予想
・高エネルギー外傷
・緊急処置の必要⇒血管損傷、下腿コンパートメント
・治療法を間違えると⇒予後不良
多い靭帯損傷
⇒ACL、PCL、MCL、LCⅬ
少ない靭帯損傷
⇒膝蓋靭帯損傷
発生
・交通事故、高所からの転落
・スポーツ外傷
・高度の肥満者の転倒
分類
( 1 )前方脱臼:過伸展損傷が多い
( 2 )後方脱臼:ダッシュボード損傷が多い.
( 3 )側方脱臼:内側脱臼.外側脱臼
( 4 )回旋脱臼
発生順位
1位:前方脱臼
2位:後方脱日
側方脱臼, 回聢脱臼の頻度は低いが関節包の裂孔で脛骨近位端が絞扼され. ときに整復不能
合併症
膝窩動脈損傷:合併率30 ~ 40%⇒末梢側の循環障害の確認は必須
足背動脈の触知が可能であっても,必ずしも膝窩動脈損傷を否定できない
膝窩動脈損傷の8時間以上放置⇒切断率は85%と報告
前方脱臼
膝30°過伸展:後方関節包とPCLの断裂
膝50°過伸展:膝窩動脈損傷
後方脱臼
脛骨近位端で直接損傷を受ける
神経損傷の合併:25~40%。
総腓骨神経損傷を合併しやすい⇒当該領域の感覚や運動障害の確認
治療法
急性期の段階で確認できた膝関節脱臼は,ただちに整復し副子固定をする必要がある.
血流循環およびコンパートメント症候群の臨床徴候がないもの⇒副子固定で経過を観察
明らかな血流の途絶があるもの⇒創外固定器を装着し,血管再建を行う.
阻血が4時間超⇒コンパートメント症候群。処置は緊急を要する.
複合靱帯損傷の治療
機能的に安定かつ完全な可動域を持つ膝に回復させる
急性期:靱帯修復術,それ以降では靱帯修復術または靱帯再建術の適応がある。
後療法としてはできるだけ早期からの可動域訓練、膝関節拘縮に対するアプローチを適切に行う
後遺症
合併損傷が靱帯損傷だけの場合:治療成績, 予後ともに比較的良好
正座. 和式トイレ以外の日常生活に支障がないこともある
合併損傷が多い場合:膝関節拘縮、変形性関節症による疼痛、靱帯の機能不全による膝関節動揺性
膝窩動脈損傷を合併する場合:循環障害により下腿の壊死が起こり切断にいたることもある.
膝蓋骨脱臼
概説
膝蘯骨は大腿四頭筋の緊張によって常に大腿骨に押し付けられているために脱臼することはまれであるが. 跳躍や飛び降りなどで, 膝関節が過度に伸展し 同時に捻転が加わると発生する.
解剖学的および骨の形態的特徴から側方脱臼(外側脱日)がほとんどである
側方脱臼(外側脱臼)
発生機序
外側脱臼(最多)
なんらかの先天的素因や発育上の 常を有する場合. 膝関節の外転や下腿の外旋を強制する外力が加わり発生
・膝蓋骨, 大腿骨遠位端部の形態異常
・外反膝, Q角の増大
・大腿骨頸部過度前捻
・外傷により内側広筋が脆弱化
・全身の関節弛級
膝蓋骨外側脱臼は膝を伸展することで容易に整復されてしまうことが多く,治療せずに放置すると脱臼を繰り返し早期に関節症をきたす.
分類
1.外傷性脱臼
外傷によって起こった脱臼
2.反復性脱臼
外傷性脱臼の後に繰り返し再発するもの
3.習慣性脱臼
外傷の既往がなく. 膝を一定の肢位(屈曲位)におくと常に脱臼するもの
4.恒久性脱臼
膝の肢位に関係なく常に脱臼しているもの. 先天性と後天性がある.
症状,所見
・脱臼肢位のまま受診すれば膝軽度屈曲、歩行不能
・膝蓋骨外側変位
自然整復しているケース:膝周囲の軟部組織損傷との鑑別
整復されて受診した場合:内側膝蓋支帯部の圧痛、不安定性
膝蓋骨外方に圧迫⇒脱臼しそうになり不安感(apprehension sign)
膝蓋骨の運動が過大:他動的に脱臼
参考文献
柔道整復学 理論編 第6版 南江堂
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