柔道整復学 理論編 手根骨骨折
手・指の骨折
手根骨全体の位置
手根骨骨折
a. 舟状骨骨折
(概要)
難治性の骨折である
理由
➀剪断力などの外力を受けやすい
➁中央部から近位骨片への血液供給が絶たれやすいので無腐性骨壊死になりやすい
➂関節内骨折(中央部から近位部)
(分類)
➀結節部
➁遠位1/3部骨折
➂中央1/3(腰部)の骨折
➃近位1/3部骨折
(症状)
➀スナッフボックスの腫脹疼痛
長母指外転筋、短母指伸筋の間
➁運動制限、運動痛⇒特に撓屈・背屈
➂圧痛⇒舟状骨結節部、スナッフボックス
➃第1、2指に沿っての軸圧痛
⑤握手痛
⑥陳旧例⇒手関節運動制限、運動痛、脱力感、腕立てふせ不能
(合併症、鑑別診断)
➀橈骨手根関節の脱臼
➁手根中央関節の脱臼
➂橈骨近位端部の脱臼骨折
➃第1中手骨基部の骨折(ベネット骨折)
⑤月状骨脱臼
⑥橈骨手根関節の捻挫
(整復)
母指を長軸方向に牽引、舟状骨部を圧迫し手を軽度橈側屈曲
(固定)
範囲:前腕近位~MP手前まで
肢位:
手関節⇒軽度背屈、撓屈
手指⇒ボールを握った形
期間:8~12週間
※固定期間はしっかり守る。早期の固定除去で偽関節の可能性
もし、偽関節になっても日常生活には支障が少ない
b. 月状骨骨折
(発生)
きわめてまれ。
手関節伸展or掌屈で手をつき橈骨と有頭骨に圧迫されて発生
基本的に機能障害なく治癒可能。
壊死にいたったものはキーンベック病に類似
(症状)
➀手関節背側or掌側の腫脹・疼痛
➁手関節の運動制限
➂手関節中央部、月状骨の限局性圧痛
➃第3、4指に沿った軸圧痛
(整復)
患者:肘関節屈曲
助手:第3指を長軸上に牽引
術者:両母指で月状骨圧迫
(固定)
範囲:前腕近位から手掌まで
肢位:手関節軽度尺屈、背屈、
期間:4~6週間 転位あれば6~8週間
c. 三角骨骨折
(発生)
手関節過伸展位で転倒
直辣外力でも発生
(治療)
捻挫と誤診されやすい
固定:5~7週間
d. 大菱形骨骨折
(発生)
・手関節の過伸展or撓屈強制
・橈骨遠位端や第1中手骨の合併
・第1中手骨の脱臼
(治療)
軽度な転位でも運動障害にされる
e. 有頭骨骨折
(発生)
直達外力や手関節過伸展で発生
転位の少ない横骨折
舟状骨有頭骨骨折症候群舟状骨と有頭骨のみの損傷のこと
(治療法)
固定
範囲:前腕近位端から第1指は詰めの基部まで、1指以外は中手指節関節まで
肢位:手関節軽度伸展位
f. 有鉤骨鉤骨折(グリップエンド骨折)
(発生)
・一度の外傷により発生
・疲労骨折として発生
ケース
・テニスラケット、ゴルフクラブ、バットを握った状態で寝具した際に、グリップエンドが有鉤骨にぶつかり受傷
・拳による殴打
(症状)
➀自発痛、圧痛
➁握り動作中の疼痛
➂陳旧例⇒屈筋腱の断裂、尺骨神経麻痺(ギヨン管症候群)
(治療法)
転位なし⇒6週間の副子固定
転位あり⇒観血療法により骨片摘出
g. 有鉤骨体部骨折
(発生)
まれな骨折
(分類)
・近位極骨折
・遠位橈尺関節脱臼骨折
・体部背側骨折
骨癒合は良好。4週間の固定で治癒
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