柔道整復学 理論編 股関節脱臼
股関節脱臼
概説
・ダッシュボード損傷など、交通事故
・後方脱臼多い
・寛骨臼、骨頭の骨折、座骨神経麻痺、阻血性骨壊死
股関節部の血管図
分類
➀後方脱臼(腸骨、座骨)
➁前方脱臼(恥骨上脱臼、恥骨下脱臼)
➂中心性脱臼
後方脱臼
発生
・大腿骨長軸方向からの外力(ダッシュボード損傷)
・過度の屈曲内転内旋強制
脱臼時に大腿骨頭靭帯を断裂
分類
・腸骨脱臼
・座骨脱臼
症状
➀大転子高位:ローザーネラトン線(ASIS~座骨結節で大転子が線にのる)2~3cm上昇。下肢短縮
➁股関節部の変形:臀部の後上方膨隆。殿筋深部に骨頭を触れる
➂股関節の無抵抗:鼡径靭帯中央部が無抵抗
➃弾発性固定:屈曲、内転、内旋
ローザーネラトン線:膝45°屈曲位で上前腸骨棘から座骨結節を結ぶ線の上に大転子がくる
これよりも大転子の位置が高い⇒大転子高位
予後
➀大腿骨頭の循環障害による阻血性骨壊死
➁外傷性股関節炎
➂骨化性筋炎
整復障害
1. 骨頭と関節窩の間に筋
2. ボタン穴
3. 大腿骨頭靭帯、剥離骨頭が介在
4. 関節窩縁の骨片介在
5. 骨折の合併(頸部骨折、骨幹部骨折、腸骨縦骨折、腸骨翼骨折
整復(実技教科書P346、347)
(1)牽引法
患者:背臥位
第1助手:上前腸骨棘を両手で押さえ、下肢の牽引に抵抗するように(下方に圧迫)固定する
術者:患肢の下腿近位端部を把持し、股関節、膝関節90°屈曲位で内外旋中間位にする
操作
➀その位置を保持するように足部を術者の両大腿部で挟み固定
➁大腿部を長軸方向へ徐々に強く牽引し、骨頭を寛骨臼縁まで引き上げる
そのまま徐々に下肢を伸展
➂大腿骨頭が寛骨臼縁まで持ち上がってきたら、第2助手が臼窩の方向へ骨頭を圧迫すると整復を容易にする
(2)回転法「コッヘル法」
患者:背臥位
第1助手:上前腸骨棘を両手で押さえ、下肢の牽引に抵抗するように(下方に圧迫)固定する
術者:一方の手で下腿近位端部を後面から把持し、他方の手で下腿遠位部をそれぞれ把持する
操作
➀大腿を脱臼肢位の角度の遠位方向へ徐々に牽引し、股関節、膝関節90°屈曲位し、さらに大腿を強く内旋していく
➁90°屈曲位になっている大腿部をその長軸遠位方向へ十分医牽引する
➂骨頭を臼縁まで導き、牽引を緩めず、その位置から円を描くように股関節過屈曲、外旋、外転
➃膝、股関節を伸展させ健側と平行にする
(3)スティムソン法
患者:上半身だけ診察台に腹臥位とし、患肢を診察台の端から下垂
助手:患側臀部を押さえるように固定
操作
術者は膝屈曲させ、下腿近位端部を持続的に押し下げる
大腿骨頭が寛骨臼窩に戻るまで緩徐に押し下げながら患肢を外旋し整復する
前方脱臼
発生
大腿骨頭は関節包の前方や前下方を破って脱臼
1. 恥骨上脱臼
股関節が過伸展時に股関節の外転・外旋強制
2. 恥骨下脱臼
股関節が強く外転・外旋・屈曲強制
症状
・転位した骨頭の隆起を鼡径靭帯の下に触れる。大腿骨を他動的に動かすと骨頭が動くのが触知
・下肢弾発性固定
・臀部の隆起、大転子の突出が触知できない
・恥骨上脱臼に比べて, 恥骨下脱臼の場合は, 強く外転し屈曲, 外旋
整復法
患者:背臥位
第1助手:上前腸骨棘部を固定
術者:一方の手で下腿遠位端部を, 他方の手で下腿近位端部を屈側から握る
操作
➀脱臼肢位関節を屈曲, 股関節を外転, 外旋)の角度のまま, 大腿を長軸遠位方向へ牽引する.
➁牽引しながら股関節を徐々に直角位にすると, 大腿骨頭は寛骨臼の前縁に移動する。さらに牽引を持続しながら下肢の内旋と同時に, 膝関節, 股関節を伸展位にする.
➂第2助手に大腿骨頭を臼窩の方向へ圧迫させ, 下肢を内碇, 伸展位にすると整復は容易にきる.
中心性脱臼
発生
高所から墜落などで大転子部を強打した時に大腿骨頭が寛骨臼蓋底を骨折させ骨盤内にめり込む
本来は「寛骨臼脱臼骨折」と呼ぶべき
後療法
整復後
臼蓋と骨頭間の圧力を除き、損傷した軟部組織の修復のために、下腿から介達牽引を2~3週間
整復後数日:等尺性収縮
約3週間後:免荷歩行、関節機能回復のための自動運動
約8週間後:免荷歩行、部分免荷鉾
約12週後:全免荷歩行
参考文献
柔道整復学・理論編 改訂第6版 南江堂
柔道整復学・実技編 改訂第2版 南江堂
最近のコメント