柔道整復学 理論編 下腿骨遠位部骨折

下腿骨遠位部骨折

下腿遠位端部骨折および足関節の脱臼骨折

a. 果部骨折

概説
内果、外果、両果、後果骨折さらに三角靭帯や脛腓靭帯の断裂あるいは距腿関節の脱臼を合併することもある
距骨の内転、外転、外旋、軸圧、足関節の屈曲、伸展の外力が複合的に作用して骨折を生じる

 

分類
人の名前分類:ポット骨折、コットン骨折
解剖学的名称分類:外果・内果骨折、両果骨折
動作による分類:ラウゲハンセン分類

1.人名分類

➀ポット骨折

ポットは腓骨の骨幹部骨折(外果先端より2 ~ 3インチ)と三角靱帯断裂と距骨の外側への亜脱臼を伴ったものを報告した.
その後デュプイトランは献体でこの骨折を再現し報告したとされている.
本来同じ骨折である.

しかし,一部では
内側の損傷が内果骨折であればデュプイトラン骨折
三角靱帯断裂であればポット骨折としているものもある.

②コットンCotton骨折
内果および外果の骨折と脛骨遠位関節面前縁(前果)部骨折を合併したものもコットン三果部骨折として扱うものや,ラウゲ・ハンセン分類のSER型(supination-externalrotation)の重傷型として扱うものもある。
本書では,

腓骨外果骨折+脛骨内果骨折+脛骨遠位関節面後縁(後果)骨折⇒コットン骨折

➂チローTillaux骨折
チローは脛骨前脛腓靱帯付着部である結節部の裂離骨折を報告した.

報告では骨端線離開に触れていないが. 本書では骨端線離開も含む脛骨前脛腓靱帯付着部裂離骨折をチロー骨折と明その骨片をチロー骨片と呼ぶこととした.

2.骨折した部位の解剖学的名称により名前をつける分類

( 1 )内果骨折
( 2 )外果骨折
( 3 )脛骨前果骨折
( 4 )脛骨後果骨折
( 5 )両果骨折
( 6 )三果骨折など

 

3.献体などにより実験的に骨折を再現させた分類

[ラウゲ・ハンセンの分類]

 

( 1 )回内・外転損傷pronation-abduction
( 2 )回外・内転損傷supination-adduction
( 3 )回内・外旌損傷pronation-external rotation
( 4 )回外・外旋損傷supination-external rotation

現在、この分類を用いることが多いが,この分類は近年様々な矛盾が指摘されている.

4.受傷外力を三つに大別した分類

( 1 )外転型
( 2 )内転型
( 3 )軸圧型
以下,この分類に沿って記載する.
1.外転型

発生
・距骨が強く外転
・回内あるいは外旋外力

 

足関節の内側には牽引力が,外側には圧迫力が働く.

損傷部
内側牽引力:内果の裂離骨折(多くは距腿関節面の高さで骨折)、三角靱帯損傷。
外側圧迫力:腓骨の遠位端部. 骨幹部. ときに近位部の骨折
遠位脛腓靱損傷あるいは前脛腓靭帯付着部の裂離骨折. 距骨との衝突による骨折を起こす。

外転と同時に足関節屈曲(底屈)が強制⇒脛骨後果か骨折することがある.
外転と同時に足関節伸展(背屈)が強制⇒脛骨前果が骨折することがある.

症状
・荷重困難,足関節部の疼痛,腫脹が著しく.幅が広くみえる.
・転位のある脱臼・亜脱臼例:足部は外反. あるいは回内, 外聢位にある(加わった外力足部変形が示唆)
・内果の近位骨折端が突出し. ときに開放創
・皮膚損傷がない例:早期に整復されないと内側部の圧迫により皮膚が壊死を起こすことがある。
・距骨が後方に転位している例:足関節屈曲(底屈)位で前足部が短くみえ踵骨部が後方に突出,
・距骨が前方に転位している例:軽度伸展(背屈)位

整復,治療法
「柔道整復学・実技編改訂第2版」p. 315,回内・外転損傷
整復
(1) 転位がない、少ないもの
⇒整復せずそのまま固定

(2) 転位のあるもの
患者:背臥位、股関節、膝45°屈曲
助手:下腿近位部を固定
術者:踵部を一方の手で保持、他方の手は足背にかけ遠位方向に十分に牽引。そのまま牽引を緩めず足部内転させて患部を直圧

固定
肢位:足関節軽度屈曲(底屈)・軽度内転・内旋位 膝軽度屈曲
範囲:大腿中央~足MP関節手前
副子:後面に金属副副子
期間:約6週間

2.内転型

発生機序,損傷部
・距骨が強く内転
・回外あるいは内旋外力

足関節の外側には牽引力が.内側には圧迫力が働く.
損傷部
外側牽引力:主に前距腓靱帯損傷。外力の大きさや足関節肢位により踵腓靱帯損傷が加わる.
踵腓靱帯の単独損傷はまれ
ときに外果の裂離骨折または関節面の高さで外果の横骨折

内側圧迫力:距骨滑車の突き上げによる内果の斜または縦骨折
・外側靱帯損傷の既往例では外側靱帯の機能不全により. 内果骨折が単独で発生することもある.
・距骨滑車の骨飲骨骨折が発生することもある.

症状
・転位, 変形が軽度なことが多い⇒外側靱帯損傷の単独損傷と判断し内果骨折を見落とすことがある.
・荷重の可否⇒内果骨折の程度に左右
・足関節は屈曲(底屈)位を呈する.
・皮下出血斑、腫脹、限局性圧痛⇒前距腓靱帯部、外・内果部.
整復,治療法

「柔道整復学・実技編改訂第2盟p. 316,回外・内転損傷」
整復
患者:背臥位、股関節、膝45°屈曲
助手:下腿近位部を固定
術者:踵部を一方の手で保持、他方の手は足背にかけ屈曲位で十分に牽引。そのまま牽引を緩めず足関節0°にして、手をずらし遠位方向への牽引を緩めず足部を外転させて両母指球で骨片を直圧

固定
肢位:足関節0°・軽度外転・外旋位 膝軽度屈曲
範囲:大腿中央~足MP関節手前
副子:後面に金属副副子
期間:約6週間

後療法
整復後数日間,とくに脱臼骨折の場合は再転位することがあるので,十分な管理が必要である.
早期から股関節の等張性収縮運動と大腿の等尺性収縮運動を指導して励行させ.経過に従った手技・物理療法を併用する.
下肢の等尺性収縮運動を積的に行わせ,松葉杖による免荷歩行.部分荷重へと進め…足関節の可動域訓練を開始し,.全荷重へと進め.機能の回復を図る.

後遺症
( 1 )遠位脛肌間の結合が離開例:疲労しやすく. 捻挫を起こしやすい.
( 2 )転位の大きい場合:変形癒合、とくに外転損傷の場合は骨折部の外転屈曲または距骨不全脱臼を残し 機能障害
( 3 )足関節に尖足位拘縮を残すことがある. また. 二次的に変形性関節症を起こして堡行障害をきたすことが多い.

3.軸圧型(pilon, plafond骨折)

概説
・スポーツにより生じる⇒低エネルギー損傷
・高所からの墜落や交通事故⇒高エネルギー損傷
近年高エネルギーによる皮膚損傷合併例が増加。

骨折線⇒脛骨関節面から端部に向かい粉砕骨折になることが多い.
関節軟骨損傷も著しい

創外固定・定術,骨移植が必要になる例も多い.

 

参考文献

柔道整復学 理論編 第6版

fukuchan

柔道整復師、鍼灸師、医薬品登録販売者として治療院を開業しています。 柔道整復師、鍼灸師を目指す学生さん向けに、オリジナルイラストを使って教科書をわかりやすくして発信しています。

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