柔道整復学 理論編 肘関節脱臼
肘関節脱臼
概要
・青壮年に好発
・全脱臼発生の中で2位
・後方脱臼多い
分類
➀前腕両骨脱臼
・後方脱臼
・前方脱臼
・側方脱臼(外側、内側)
・分散脱臼(前後型、側方型)
➁単独脱臼(まれ)
・尺骨脱臼
・橈骨脱臼:モンテギアなどで発生
前腕両骨後方脱臼
発生
・肘伸展位で手掌をつく
・後方からの強い衝撃で過伸展。肘頭の上縁が肘頭窩の情報に衝突⇒上腕骨遠位端部が前方
⇒関節包の前面を破る。前腕骨は上腕骨小頭の後面に接し尺骨鈎状突起は上腕骨滑車の後壁に乗る
(症状)
・激しい疼痛
・肘軽度屈曲(30~40°)弾発性固定
・自動運動不能
・ヒューター三角乱れる⇒肘頭高位 ※ヒューター三角は肘屈曲でみる
・前腕短縮、肘頭後方突出
三頭筋腱が索状に触れるのは新鮮なときのみ。時間経過と共に腫れが大きくなりわかりづらくなる
※上腕は不変
(整復)
整復前確認
・血管損傷→橈骨動脈の拍動
・神経損傷→手掌部の皮膚感覚
整復
➀座位または背臥位の患者の上腕を助手が固定
➁術者は一方の手で手関節部を前腕回外位で把持し他方の手で肘関節を把持し脱臼肢位のまま前腕長軸末梢方向に徐々に牽引する
➂牽引を持続して、肘関節屈曲させ、この際肘関節部に当てた他方の手で患部を把持し肘関節部に当てた手指の一部で上腕遠位端部を前方から後方へ、残りの種子で肘頭部を後方から前方へ圧迫
➃整復後⇒整復確認(肘の屈曲、回内・回外)
(固定)
範囲:上腕近位部からMP手前まで
肢位:肘屈曲90°、中間位で三角巾提肘
期間:3週間副子固定、その後1週間提肘
後療法
受傷後1週間:患部冷却、安静。固定以外の肩、手指は直ちに自動運動
疼痛減少⇒上腕筋、前腕筋のアイソメ
受傷後10日:三角巾除去にて肩運動
受傷後4週目:副子除去。肘関節部に理学療法と自動運動
(合併症)
骨折:上腕の内側上顆、外顆、尺骨鈎状突起、橈骨頭
神経損傷:橈骨、尺骨、正中
外傷性骨化性筋炎
側副靭帯損傷:内側に多い
前腕両骨前方脱臼
発生
肘屈曲位で後方からの外力、前腕部に直達外力
発生はまれ
症状
・肘の前後径増大
・弾発性固定⇒90°近く
・多くは肘頭骨折を伴う
➀座位または背臥位の患者の上腕を助手が固定する
➁術者は一方の手で手関節部を、他方の手で肘関節部を把持し脱臼肢位の角度から肘関節を徐々に伸展しながら前腕回外位に牽引する
➂牽引を持続して前腕近位端部を前方から後下方へ圧迫しつつ肘関節を屈曲して整復する
➃整復確認⇒肘屈伸、前腕の回内回外
固定
肢位:肘関節90°前腕回内、回外中間位
範囲:上腕近位部からMP手前まで
期間:3週間
※肘頭骨折したものは手術
前腕両骨側方脱臼
前腕両骨外側脱臼
(発生)
前腕部に強力な内側からの外力で肘が外転強制
症状
・靭帯の断裂により、横径増大
・内顆が突出、肘頭が上腕骨外顆の側方にあり橈骨頭が触知
整復
➀助手は上腕を固定、術者は一方の手で手関節を把持、他方の手で前腕近位端部を前方から把握して牽引
➁牽引しつつ尺骨近位端を下方に押圧し、ついで内側に向けて力を加える
➂最後に前腕を回外しつつ上腕近位端を回るように尺骨を押しながら肘関節を屈曲
固定
肘90°で固定
前腕両骨内側脱臼
外側脱臼と反対の機序で発生
(整復)
➀助手は上腕を固定、術者は前腕近位端部を前方から把握
➁肘関節屈曲位のまま強力に末梢牽引を加えながら前腕近位端を下外側に圧迫
整復音がしたら肘屈曲
固定
肘90°固定
前腕両骨分散脱臼
発生はきわめてまれ
・前後型(尺骨後方、橈骨前方)
・側方型(尺骨内方、橈骨外方)
橈骨頭単独脱臼 まれ
多くは尺骨骨折(モンテギア)を伴う
⇒橈骨神経(後骨間神経)も疑う
整復
・上腕を固定し、上腕を強力に牽引しつつ、一方の手で肘関節部に内転するように力を加えながら橈骨頭を直圧し整復
固定
・肘鋭角屈曲位、回外位で固定
肘内障
・2~4歳に好発
発生
強い引っ張り+前腕回内力
橈骨輪状の下を橈骨頭がくぐりぬける
前腕回内位で体幹のしたにして転がる
※全身関節弛緩、この時期の橈骨頭が軟骨成分だから。
(症状)
➀肘回内位、軽度屈曲
➁肘関節外側の運動痛
➂軽度の肘屈曲・回旋は可能だが、それ以上の屈曲・回外に不安感、疼痛。上肢を動かさない
➃局所の腫脹、発赤なし
(鑑別)
・腫脹あり⇒骨端軟骨損傷や離開を疑う
・局部に変化なし、上肢を動かさない⇒鎖骨の若木骨折
(整復法)
術者は一方の手で子供の全暗部を把握し、他方の手の母指を橈骨頭部に当て肘関節部を把握、前腕を回内・または回外しつつ橈骨頭に当てた母指で橈骨頭を圧迫すればクリック感を感知し整復される
(治療法)
特別な固定必要なし
参考文献
柔道整復学 理論編 第6版 南江堂
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