柔道整復学 理論編 足根部・足趾部の軟部組織損傷
足根部・足趾部の軟部組織損傷
足根部の軟部組織損傷
1横足根関節(ショバール関節)損傷
脱臼、墜落や轢傷などの高エネルギーな直達外力.前足部に内・外転力が働く介達外力により.足根骨や中足骨骨折を合併した不全脱臼が起こる
完全脱臼⇒まれで.関節全長にわたって損傷することは少ない.
ショパール関節を構成する足根骨に圧痛を認める場合は CT像で骨折を認めることも多い.
早期の徒手整復で循環障害のリスクは下がるが, 外固定では整復位保持が困難なことが多く. 経皮ピンニングなどによる内固定が行われる
アーチ構造の破綻. 変形性関節症⇒荷重痛残存しやすい
部分損傷:前述したショパール関節外側に位置する二分靱帯に多い.
2足根中足関節(リスフランLisfranc関節)損傷
脱臼、墜落や轢傷などの直達外カ.前足部に回旌や軸圧が働く介達外力で発生
関節全長にわたる損傷と部分損傷があるが発生はまれ
第2中足骨基部をはじめ他の中足骨や足根骨骨折を伴う脱臼骨折が起こるショパール関節脱臼と同様に.
解剖学的整復位保持を目的に徒手整復後に経皮ピンニングなどの内固定が行われる.
部分損傷:裸足あるいはスパイクシューズを着用する竸技でみられる
いすれも趾部が接地し固定された状態でMTP関節が過伸展し.足部に軸圧がかかり発生
損傷部
内側楔状骨と第2中足骨を結ぶリスフラン靱帯に損傷が起こる.第1・2中足骨基部間には骨間靱帯が存在しないため,リスフラン靱帯断裂によって第2中足骨間の離開が起こり.
足部アーチにも影響を及ばす.受傷時の疼痛が強いにもかかわらず,単純 X線像での画像所見が乏しいため初期治療が軽視され,疼痛が残存した陳旧例として診断されることもある
治療
離開が明らかでない場合,5~6週の金属副子固定と免荷を行い,固定除去後は足底板を装着し徐々に荷重を開始する.離開例やアーチ低下例は観血療法の適応がある.
3扁平足障害
内側縦アーチが低下したものを扁平足という
外反足,外反扁平足,横アーチの低下した横軸扁平足(開張足)などを総称することも多い.
足根骨骨折や足部損傷後の外傷性障害では,変形性関節症や軟部組織に起因した疼痛が残存するため予防に努める.
様々な分類があるが,発生時期による分類(ホフマンH。hmannの分類)を基準にする.
小児期扁平足:基礎疾患を有する例を除き治療対象となることは少ない.
思春期扁平足学童期以降の体重増加、スポーツ活動活発化に伴い発症,足部の倦怠感,ときに疼痛を訴える.
腓骨筋痙直型扁平足:距骨下に生じた炎症により腓骨筋などの外がえし筋群のスパズムを惹起し,著しい外反扁平足を呈する
またシンスプリント.有痛性外脛骨,足底腱膜炎,種子骨障害に外反扁平足を合併していることが多い.
成人期以降の扁平足:肥満や加齢による筋力低下,腱,靱帯の脆弱化に起因
⇒後脛骨筋腱の機能不全が病態の中心と考えられており,同腱に沿った疼痛,腫脹。
保存療法では足底板の挿入や体重管理など患部への負担軽減,足部内在筋や外在筋の運動療法を指導する.
足・趾部の軟部組織損傷
1.中足部から後足部の有痛性疾患
セーバ—Sever病
踵骨隆起部のアキレス腱の牽引による骨端炎・または無腐生骨壊死
7~10歳の肥満男子に多い
運動の制限などにより症状は改善し 予後は一般的に良好である
症状
踵骨骨端部の運動痛・圧痛
つま先歩き破行⇒疼痛緩和のため
診断
➀踵骨骨端部の圧痛
➁Ⅹ線:踵骨骨端部の硬化および分節化
治療
➀踵が柔軟で、足関節が多少屈曲位になる踵の高い靴の着用
➁スポーツ活動の制限、休止
アキレス腱滑液包炎
発生機序
長時間の歩行などにより, 滑液包がアキレス腱との摩擦あるいは圧迫刺激を受け炎症を起こす. 靴との関連性が強く, 従来は欧米人に好発していたが, 現在ではわが国でも頻繁にみられる疾患の一つである.
症状,所見
( 1 )アキレス腱付着部の圧痛,歩行痛がある.
( 2 )革靴など不適合な靴により症状が増悪する.
( 3 )アキレス腱付着部に母指頭大の腫瘤を触れる場合がある.
治療法
物理療法,局所の安静,靴の指導など,保存療法が原則となる.
有痛性外脛骨
概説
足の舟状骨内側に存在する過剰骨が疼痛の原因となる疾患.外脛骨の出現率は10 ~ 20%
10 ~ 15歳の女性に多く,
体重増加,運動量の増加などが関係するといわれている
同部位には内側縦アーチの保持に関与する後脛骨筋力付着しており.扁平足のある患者に発生しやすい.
発生機序
( 1 )運動量増加に伴い,徐々に疼痛が出現する.
( 2 )関節の捻挫などの外傷を契機として出現するものの多くは成人期に発症する.
症状,所見
足部内側に骨性隆起を認め,局所に圧痛,発赤.熱感がみられる.靴を履くと同部位が圧迫されて痛みを訴える.
治療法
保存療法では運動の制限,物理療法,足底板の挿入などが行われる.観血療法では外脛骨の摘出術が行われる.
d.踵骨棘および足底腱膜炎
概説
踵骨棘とは単純Ⅹ線側面像で踵骨隆起内側突起に棘状の骨増殖を認める疾患をいう.
年齢:中年以降に多く
性差:みられない
症状
骨棘の存在部位に圧痛
足底腱膜炎は足底腱膜の損傷で, 圧痛部位は一般的に内側縦アーチ部に存在する. ランニングなどにより,外力が繰り返し足底腱膜に加わることで発生する.踵骨棘との直接的な関連性はないといわれるている
治療法
足底腱膜のストレッチや足底板の挿入などが有効である.
e.第1ケーラーKöhler病(フライバーグ病)(整形外科学)
足の舟状骨の無腐生骨壊死
好発年齢:3~7歳
症状
足の外側接地跛行⇒立位・歩行時の足舟状骨部痛をさけるため
足の舟状骨部の腫脹・圧痛
診断
Ⅹ線:舟状骨の扁平化・硬化と軟化の混在した不整像を水戸絵M、骨核は扁平化し2、3個に分裂することもある
治療
保存療法:歩行用ギプス、足底版
予後:1~4年後にはⅩ線正常化。変形は残さない
足根管症候群
足根管部で脛骨神経の枝が種々の原因により絞扼を受けて発生するものをいう.
原因
( 1 )外傷(骨片,過剰な仮骨,腫脹,浮腫など)
( 2 )ガングリオンなどの占拠病変
( 3 )足根骨癒合症
( 4 )回内足症状,所見
足底部への放散痛や感覚異常, 足根管部にチネル徴候を認める
治療法
保存療法が原則であり, 回内足によるものは足底板を挿入する. 保存療法の無効例や明らかな圧迫病変がある場合は観血療法の適応がある.
前足部の有痛性疾患
外反母趾
第1趾がMTP関節で外反する変形である.女性の発生が多く,発生要因には種々の因子が考えられるが,ハイヒールなどつま先の細い靴,扁平足,開張足は大きな要因となる.
症状
第1趾MTP関節部に疼痛および外反変形
中足骨頭の内側突出に伴う滑液包の炎症と肥厚(バニオン=腱膜瘤)
変形が強くなる⇒第1趾が第2趾の底側に入り込み, 第2・3趾のMTP関節底側に胼胝(ペんち)を形成
治療法
運動療法,物理療法
足底板の挿入(内側縦アーチの形成) ,
靴の指導などを行う.
変形が進行⇒観血療法の適応がある.
b.強剛母趾
第1趾MTP関節の変形性関節症
年齢:中年以降の高齢者が多い.
同部位の外傷や形態によって発症するが,痛風が原因となることもある.
症状
MTP関節部の運動痛から始まり.徐々に関節可動域制限(とくに背屈制限)が出現し骨性の隆起や圧痛)出現
c.種子骨障害
第1趾には内側種子骨と外側種子骨の二つがあり.種々の筋.帯が付着している.
疾走や跳躍など繰り返される刺激により,種子骨が存在する第1趾MTP関節近位部に.圧痛.荷爪痛. 運動痛を認めるものを総称して種子骨障害という
病態:種子骨の外傷性骨折.疲労骨折.分裂種子骨障害.骨軟骨炎.種子骨周囲炎などがある.
d.第2ケーラー病(フライバーグFreiberg病)
第2中足骨頭の骨破壊変化による中足骨痛。
原因不明:血行不全、ストレスにより骨頭内骨折説もある
13前後の女子に多い.
症状
第2、3中足骨痛
両側性発生が多い
歩行痛、つま先立ちになる離踵痛の痛み
中足趾関節部の圧痛・腫脹・発赤・可動域制限
診断
Ⅹ線:中足骨骨頭の扁平化した不整像、骨棘・関節遊離体
治療
軽症:パッドにより骨頭部への荷重痛軽減
重症:観血療法(骨頭楔状骨切り術)
e.モートンMorton病
足底神経の枝が中足骨頭間部において肥厚し絞扼されて起こる.第3・4中足骨頭間で絞扼されることが多い
中足骨頭間部の疼痛.チネル候.末部の感覚障害がみられる.
H注意すべき疾患
(1)痛風発作
(2)糖尿病性障害
(3)関節リウマチ
(4)足部の血行障害(レイノー病、閉塞性血栓性血管炎、閉塞性動脈硬化症)
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