柔道整復学 理論編 上腕骨遠位端部骨折
上腕骨遠位端部骨折
発生頻度
1位:上腕骨顆上骨折
2位:上腕骨外顆骨折
3位:上腕骨内側上顆骨折
a.上腕骨顆上骨折
・幼小児に好発
・肘関節周囲の骨折で最も多い、難しい骨折
・伸展型が多い
(分類と発生)
伸展型:肘伸展位で手をつき、前方凸の屈曲力
屈曲型:肘屈曲位で肘をつき、上腕骨遠位端に過屈曲力
(骨折線と骨片転位)
伸展型
骨折線 :前方から後上方
骨片転位:遠位骨片は後上方転位
内側皮質の粉砕、骨折線の斜走で遠位骨片は内旋
屈曲型
骨折線 :後方から前上方
骨片転位:前上方
(症状)
➀腫脹
➁疼痛
③機能障害:屈伸運動障害
➃異常可動性、軋轢音
⑤変形:肘関節後方脱臼と類似
⑥肘関節の厚さと幅の増大
⑦神経損傷:特に正中、橈骨神経損傷
診断の要点
➀ヒューター線:肘伸展位で内側、外側上顆を結ぶ線。正常な場合ヒューター線上に肘頭がくる
➁ヒューター三角:肘屈曲し後方からみた場合、内側、外側上顆、肘頭を結ぶ三角形のこという。
正常な場合下向きの二等辺三角形を呈する
③ファッドパッドサイン:関節周囲にある脂肪組織が血腫により圧迫されて移動することにより現れる透亮像
上腕骨顆上伸展型骨折と肘関節後方脱臼の鑑別点
整復前の注意
骨片転位、神経、血管損傷の確認
(整復)
伸展型
患者:座位、肘直角屈曲、回内位
術者:一方の手で上腕遠位端を握り、他方の手で前腕を握る。
次に前腕の方向に牽引し、母指を肘頭にあて強く前方に押す
整復されたならば、肘関節を徐々に屈曲し鋭角位にする
※整復後橈骨動脈の拍動を確認する
(固定)
伸展型
肢位:肘90°~100°前腕回内位
範囲:肩からMP関節の手前まで
屈曲型
肢位:肘80°~90°、中間位
範囲:伸展型同様
(Ⅹ線評価)
BA角(10~20°):バウマン角
CA角(5~10°):運搬角。内反肘変形で減少
TA角(45°):傾斜角
(合併症)
➀循環障害
➁神経損傷
③皮膚損傷
(後療法)
循環障害、神経損傷に注意しながら自動運動を主体に行う
(後遺症)
➀阻血性拘縮:フォルクマン拘縮
➁骨化性筋炎:暴力的な手技による。
③屈伸障害:遠位骨片のTA角(傾斜角)の整復不全
➃形態的変化:内反変形が多い
※内反肘変形起こしやすい骨折:上腕骨骨幹部骨折(肘に近い部位)、上腕骨顆上骨折
※外反肘骨折起こしやすい骨折:上腕骨外顆骨折、橈骨近位端部骨折
b.上腕骨外顆骨折
(発生)
プルオフ型:肘伸展で手掌をつき肘関節に内転力働き前腕伸筋群の牽引
プッシュオフ型:肘伸展、軽度屈曲位、前腕回内位で手をつく
(骨折線、骨片転位)
骨折線:外側の靭帯の付着部⇒滑車中央の関節内
骨片転位:回転し前方転位
(症状)
➀腫脹:特に外顆。初期は内側の腫脹なし
➁疼痛:外顆部に限局性圧痛
③機能障害:肘関節運動は可能なことが多い
➃異常可動性、軋轢音
(固定)
転位なし:肘90°、中間位から回内位
転位あり:肘80°回外位
(後遺症)
➀偽関節
➁外反肘
③遅発性尺骨神経麻痺
c.上腕骨内側上顆骨折
(発生)
介達外力:外転強制され前腕屈筋群および内側側副靭帯の牽引により発生。肘関節脱臼に合併
直達外力:内側上顆に強打
※関節包内骨折
(症状)
➀腫脹:特に内側に著明
➁疼痛:限局性圧痛、運動痛著明
③機能障害:肘関節の屈伸障害
➃異常可動性、軋轢音
(骨片転位)
転位:前下方転位(前腕屈筋、回内筋群)
※脱臼を伴う場合、関節包の裂口から骨片が関節包内に入ることがある
(整復)
患者:肘屈曲、回内位
術者:母指をあて、上外側に向かって圧迫
(固定)
範囲:上腕中央部からMP手前
転位なし:肘直角、前腕中間位
転位あり:肘直角、回内位
(後遺症)
➀肘関節伸展障害
➁前腕回内制限
③尺骨神経麻痺
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